族の男は大股な一歩を踏み出すと、立ち尽くすディルトの首筋に无远虑な挙动で腕を伸ばして微笑した。
「コレはな、首轮だ」
「!!!!」
冷ややかに、しかしさも愉快そうに告げられた短い台词に、ディルトの身の内で歓喜と愤怒が跃りだす。
首、轮……だと――!?
横暴に投げつけられた魔族の台词に、ふつふつと怒りが燃えたつ一方で、得も言われぬ仄暗い感情が身体の奥底でくすぶりだすと、それらは互いに拮抗しながらディルトの身体中を駆け回った。
首、轮――本来は、犬や畜生に嵌められるはずの――首轮――。
最前のテールの微动によって、再び热病に侵されだした轮郭のぼやける思考回路で考え至ると、ディルトの背中に不吉な汗が浮き上がっていく。
首、轮――。
ごくりと喉を鸣らして眼前の鉄块を见据えると、それは确かに、魔族の告げた通りの代物だった。
太い钢鉄の円柱の、中心部分を同心円状にくり抜いて作られたような、金属の筒――。
まさしく、首轮――。
けれど、よく见れば魔族の手にえられたその物体は、ただの简素な钢鉄の环、とも言い难い。
目を凝らせば、がっしりとした分厚い金属の表面には、この暗闇の中、そしてディルトの欲に饥えたぼやけた瞳でも分かるほどの、凝った意匠が施されている。
见るからに硬质そうなこの环に、一体どうやってそこまで精密な図案を雕り込んだのかは皆目见当がつかないが、事実、ディルトの眼前でニヤつく魔族の手の中に纳まったそれには、复雑で、かつどこか不穏な雰囲気をたたえた纹様がぐるりと一周、丹念に雕刻されているのである。
そして、その筒の外周の左右両端には、武骨で大きなカンが设けられていて、それを见とめたディルトが无自覚に――あれは――所谓、锁を取り付ける为の个所、か――と思った矢先、魔族の片割れが乱暴に、震える裸体の首筋を押さえ込んだのだ。
「おら!首轮だって言ってんだからさっさと首を出すんだよ!」
「……ッ」
见ているだけで己を侮蔑してくるようなその物体を前にしながら无理矢理に头部を押さえ込まれて、ディルトは弱く口唇を噛み缔めると、汗の浮いた眉根を寄せる。
自分は――こんな……こんな、屈辱的な、物を――。
眼前に控える辱の具现とも言うべき钢鉄の环を浊った视线で睨みつけると、ニヤニヤと下品にほくそ笑む魔族の分厚い手の中で、钝い色をした首轮は、嗤うようにぎらりと光った。
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「おーおー、よく似合うぜェ、勇者サマ!サイズもちょうどイイじゃあねェか…!それに…ハハッ!锻えた身体に立派な首轮、まるで今から竞りにかけられる奴隷みてェで见栄えも中々のモンだぜェ?」
「ククククッ!ホントにぴったりお似合いだなァ…!!最初コレを首轮に使うって闻いた时にゃあさすがにどうかと思ったが……こうしていざ嵌めてみると……ククククッ!!ホントに最高にお似合いだぜェ?雄ザル勇者サマよォ!!」
「ッ……!!」
耳元でがちり、と钝い金属音が鸣り渡り、阳に焼けた首筋にずっしりとした重量がのしかかった瞬间に、ディルトはぞくぞくとした恍惚感を感じて、咄嗟に下唇を噛み缔めた。
なぜ、自分が、こんな――よりにもよって、こんな物を取り付けられた瞬间に――!
「ッ…!!」
だが、彼がいくら头で思っても、色欲に付き従った肉体は、溢れる背徳感に身を震わせる。
「おやァ…?どうしたんだァ、勇者サマ……!お前ェの事だから、もっと嫌がって騒ぐかと思ってたが……いやに素直に首を差し出したなァ…?『やめろ』の一言も言わねェでよォ……!」
「く…!」
「もういい加减、抵抗するのは无意味だって悟ったかァ……?それとも……お前ェ……」
「ッ……!!」
薄く持ち上げた唇の端から、白く辉く白刃のような牙先を覗かせて、魔族はぎらりとディルトの顔を覗き込んだ。
见透か、されて――!
魔族の含みのある声を身体に受けて、ぎくり、と身体を硬直させたとほぼ同时、尻の中では二本の触手が内壁をかき混ぜるように身をよじる。
「く…ッ!!!!」
思わず跳ねた背中と声に、魔族たちはもう高い嗤いを张り上げる事はしなかった。
その代わりに。
「クククク……ッ!!可哀想になァ……!!あれだけ夸り高くて强気だった勇者