いや、正确には、ディルトの胸中に抱かれたなけなしの正义や気骨はどうであれ、もう身体が――散々に嬲られ、弄ばれ尽くした男としての肉体が――腕を上げ、强く拒絶の意思を示すよりもずっと早く、じっとりとした黒い期待に疼き出してしまったのだ――。
「よしよし、さすがに七日もテールちゃんで责めると素直だなァ…!よォし、そんじゃあそのまま立ってろよ。なァに、大人しくしてりゃあ、痛てェ事も、怖い事も、それどころか、さっきみてェに泣き叫ぶような事も、しねェからよォ……!」
「ッ……!」
わざとらしく耳元に顔を寄せてそう言うと、魔族は先刻のディルトの痴态を二、三蔑み交じりに并べ立て、それから身体を屈めて床面に向けて腕を伸ばした。
「……く…ッ…」
魔族の吐息を吹きかけられた鼓膜が热い。
己の耻ずべき愚行を、余す事なく、それも、鼻先を突き合わせる程の至近距离で终始観察されていた事実を、魔族の言叶によって突きつけられて、ディルトは今更ながらに悔い、耻じた。
けれど、彼がそうして自责の念にとらわれている间にも、肉体の奥深い所では、先刻の快楽の余韵を探して、雄の本能が狂ったように猛っている――。
どこだ……!
『あの』悦びは、どこにある……!!
どうして急に、消えてしまった……!!
俺はまだ……!!
俺はまだ――到达していない――!!
この悦びの、あの快楽の、最果てに――!!
「ッ…う……!」
自分自身の身体の内侧から、今にも溢れてきそうな不穏で、それでいて震えがくるほどに浓密な甘い欲望を味わって、ディルトは上げていた视线を床へと下ろすと、そのまま薄く唇を噛み缔めて震える五指を握りしめた。
もう、戻れない――のか――。
苦闷とも恍惚ともつかない表情の里侧で、ディルトが最後の理性を用いて目の前にぶら下がった本能的な欲望へと奔りだそうとする己を止めると、尻の穴の中侧で、ずるり、と低くテールが动いた。
「ッ――!!」
そう、まだ、彼は解放されていないのだ。
魔族たちの手によって、彼に与えられたのは。
真の解放とは程远い、物质的な弛缓だけ――。
「く……う……ッ」
ずるり、ずるり、と仅かに再动しはじめたテールの动きを柔らかく解された肛门口で受け取ると、ディルトは苦しげに眉をしかめて呼気を吐く。
热い――――。
自らの唇から滑るように吐き出された吐息には、明かな、淫らな热が内包されている。
解放など、されて、いない――。
地狱のようなあの责め苦は――まだ终焉を迎えては、いないのだ――。
自分自身の身体の芯へと染み込ませるように、ディルトは细く长い、热を帯びらため息を吐き出すと、それからゆっくりと视线を上げて眼前に立った魔族を见やる。
「くく、どうした?勇者サマ……!」
「……ッ…」
自分を见返す魔族の瞳に、见知らぬ顔が映っている。
自分とまったく同じ容姿で、自分とまったく同じ姿で。
ただ、违うのは。
「ッ……は……あ……ッ」
下劣で淫荡な欲にれた、浊った一対の瞳だけ――。
夸りを舍てた訳ではない――。
高洁な気骨を保つ事を谛めてしまった訳ではない――。
ただ、それ以上に――。
それ以上に、脳髄の奥で苏る先刻までのとろける程の快楽と、それを直视して煮える本能が――。
强い、だけ――。
「よォし、それじゃあいつまでも突っ立ってると大事な约束に遅れちまうから……勇者サマにはさっそくだがコレを付けてもらうとするかなァ……!!」
「ッ……!」
蔑むような声色で、钝くゆっくりと火照った肌を刺し贯かれて、ディルトは期待と余韵に炙られる背筋を震わせた。
そうして、彼がじっとりとした黒い淫欲で浊り始めた视线で魔族の姿を一瞥すると――その手には目にしただけでも分かるほど、ずっしりと重く、顽丈な钢鉄でできた环状の物体が、えられていたのである――。
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一体、あれ……は――!
目の前に突如として姿を现した、见るからに忌まわしげな物体を见つめたまま、ディルトが热を帯びた喉を咽下させ、胸中で自问するより早く――。
魔