の日も素晴らしい成果を収め、ディルトたちが帰途につこうとした、その矢先の出来事だった。
『おお、ディルト様、あれをご覧なさい』
傍らの上位骑士が指さした方を何気なく见やって、ディルトは一瞬絶句した。
なぜなら。
『な……なんだ、あれは――!』
ディルトが视线を向けた先、上位骑士が指さしたその场所では。
『グ…グオオオ……!』
『あ、あれは……魔か……?!』
夕焼けに红く照らされた荒野の中、ディルトの告げた通り人间界には存在しないはずの生き物が、その身を不気味に震わせながら大地の上でもがくように暴れ回っていたのである。
『な、何を――』
言いかけたディルトが言叶を継ぐより早く、傍らに立った上位骑士が形の良い唇を上下に割った。
『良くご覧なさいディルト様。あれは确かに魔ですが、それだけではない』
『……な、に…?』
『ほら、うずくまる魔の下腹部の辺り、あそこにまとわりついている物が――见えますかな?』
『…………!!』
告げられた後、视线を细めながら目を凝らして、そうしてようやく、ディルトは上位骑士の指さした『そのもの』を认识できた。
『あれは……』
『ええ、あれがテールです。下等魔物なので书物などでは良く目にしますが、捕食する饵が乏しいため人间界には灭多に姿を现しません。ディルト様も実物をご覧になるのは初めてでしょう。今日は、ある意味运がいいですな。生きているテールを见られるなんて。ほら、ディルト様。ご兴味があればもっと近くでご覧になっても大丈夫ですよ。なあに、平気です。テールには他の魔物とは违い、我々を袭う为の牙もありません。その证拠に……ほら、饵を获る时もああして获物の体内に直接『侵入』して内臓から栄养素を摂り込むのです』
『…………き、気味が悪いな…』
『ハハハ、まあ确かにあまり気持ちの良い物とは言えませんな。何しろテールの捕食は……ああして魔やゴブリンなどの弱った获物に接近し『一番体内に侵入しやすい场所』……即ち肛门部分からああして触手を滑り込ませて行う、见るもおぞましい物ですから。まあ、それが『テール』という名前の由来にもなったんですがね。奴らが捕食している姿は、まるで饵になった生き物の尻から、长く太い尻尾が生えているように见えますからな。ああ、ディルト様、お嫌なんでしたら无理にご覧になる必要もありますまい。さ、それではそろそろ参りましょうか。今日は狩りにかまけて少々帰りが遅くなってしまいましたからな。今顷は城内でゴルソン国王がディルト様のお帰りを今か今かとお待ちになっておられますよ』
『まったく……父上の过保护にも困ったものだ』
『ははは、そうおっしゃられるなディルト様。いくら国王様が雷电のゴルソンと恐れられても、そこは人间であり父ですからな。爱しい我が子はどれだけ大きくなっても我が子であって、目に入れても痛くないものなのですよ。ご子息がこんなに立派で逞しく成长されていたとしてもね』
「ッ――!!」
过去の在りし日の出来事を、告げられた言叶の一文字まで违わず思い出した瞬间に、ディルトの総身をゾッとする冷たい何かが走り抜けていく。
そうだ――!これは……この生き物は――!
头から冷え切った冷水をかぶせられたような感覚のさなか、脳内にはあの夕闇の中でのたうつ魔の姿が苏る。
『ン…モオオオ……!』
苦しげに悲鸣を上げ、大地の上で身を転げさせる获物はやがてその苦闷の叫びを切迫させて――。
「ッ!!」
瞳の中心に再现された荒野の场景を覗き込んでいるその只中から、ディルトを现実に引き戻したのは、右侧の太ももに触れた冷たくぬるりとした感触だった。
「く…そ……!」
気付けば、足首に取り付いたテールは、今やその触手の先を伸ばし、络めて、ゆっくりとディルトの身体を遡上してくる。
「や、やめろ……!」
右足を这い上がってくるテールの触手の表面からは、絶えずぬるつく粘液が溢れ出るように渗み出していて、それをまとったテールがゆっくりと身をくねらせると、触手の通った後には、まるでナメクジが这いまわったような光る轨迹が生まれていく。
「く…ッ…!や、やめろ…!!」
不気味极まりない感覚と、捕食者が我が身をじわじわと这い登ってくる恐怖感とに板挟みになりながら、ディル