い皮肤を染め上げていく。
魔族……どもめ――!!
愤怒に燃える胸中で、ディルトが怒号と共に低い雄叫びを张り上げた、直後だった。
「おう、なんだ。勇者の野郎、目を覚ましたのか」
「!!」
鉄格子の向こう侧で、今までとは违う声色が、低くゆっくりと持ちあがったのだ。
04
「!!」
闻こえた声に、ディルトは反射的に身构えた。
ディルトの咄嗟の动きと共に、牢狱内には、じゃらり、と低い金属音がこだまする。
「――谁だ!」
口をついて出た、勇ましく猛々しい声に応えたのは、先刻までの魔族の物とは别の声音だった。
「ふん、何が『谁だ』だ。负け犬のテメエになんかにいちいち名乗る名前はねェな」
「なにッ!?」
明らかに挑発するような返答にディルトが跳ね起きんばかりの势いで视线を上げると、そこには暗褐色の色をした体躯を持つ新たな魔族が、瞳を细めてディルトの姿を见下ろしていた。
「大体、テメエ何か勘违いしてねェか?ココはな、俺たち魔族の暮らす魔界、しかも罪人をブチこんでおく牢狱の中だ。そんな所に捕えられてる分际で、よくも伟そうに『谁だ』なんてぬかせるもんだな」
「っ…!贵様――!」
新たにディルトの前へと现れた魔族は、最前の魔族とは打って変わって、横柄な态度と口调で鉄格子の前に阵取ると、その场所でまるで家畜でも眺めるかのような视线で眼下の肢体を眺め下す。
「はん、见るからに生意気そうなツラだ」
「なにッ!」
「魔王様に弓を引いたのが颔けるツラだって言ったんだ」
「贵様……!」
「まあいい。テメエがどんなツラをしてようと、俺には関系がねえからな。ああ、いや。でも」
言いかけて口をつぐんだ魔族の顔が、ゆっくりと、だが确実に卑劣な笑みをたたえだした事に気が付いて、ディルトが我知らず身の内をぞくりと震わせると、魔族の男は薄く微笑しながら嗫くように付け加えた。
「やっぱり『勇者』ってのは生意気な方が楽しめるかァ……」
「!」
「その方が……『観てる方』も喜ぶだろうしよォ……」
低く微笑んだ表情のままそう言う魔族に、ディルトはそれ以上『どういう事だ』と闻く気にはなれなかった。
闻かずとも、想像ができたのだ。
「…………」
この魔族たちの言う通り、自分はこの魔界の王である魔王に対し白刃を振りかざし、命を夺い、倒そうとした。
つまりは、この世界の顶点であり、世界そのものとも言える存在を、抹杀しようとしたのである。
目の前の魔族たち……いや、それどころか、この魔界に住まうあらゆる魔族たちから见れば、ディルトは他でもない、主君杀しの首谋者なのだ。
しかし、魔王讨伐は失败に终わり、『勇者』と讴われた自分は、この通り暗く狭い牢へと投狱された。
それが、一体何を意味するか。
谁に説明されずとも、ディルトには理解できていた。
杀される――。
目を覚まし、狼狈を振り払い冷静さを取り戻したディルトが、真っ先に考えたのはそれだった。
自分は、このままでは间违いなく……。
だからこそ、この牢の中から脱け出そうと必死になった。
恐怖や命惜しさからではない、纯粋な正义と、己の命をかけた使命の为に――。
「…………」
鉄格子の向こう侧で、変わらず微笑する二人の魔族を见つめながら、ディルトは煮え返りそうになる脳细胞を努めて冷やし、押しとどめた。
热くなってはいけない。
このまま激情に任せ、力ずくで牢を破っても、できる事は目の前の二人の魔族を打ち倒し、その後に集まってくる数人の守卫を屠る程度。
その後は、结局――。
本当なら、今この场で自分の腕を引きちぎり、鉄枷の拘束を打ち破ってでも、目の前の魔族たちに飞びかかり、その喉笛をかき切ってやりたかった。
だが、ダメだ。
それは、ただ単に、自分の怒りと憎悪を弾けさせるだけの事で、世界を、平和を守る事には繋がらない――!
「……っ…」
悬命に抑え杀した感情が、喉の奥でじんわりとした淀みに変わると、ディルトは努めて静かに息を吐き出し、身体の中から言叶にできぬ愤怒や热を舍