自らの身体……それも、下の下にある臀部の露わな肌を抚で上げる。
ずるり。
「ッ……!」
自分たち人间とは明らかに违う、异形の魔物が持つ触手の腹で、柔らかな肌を舐めるように这われるその感覚は、例え男であっても思わず鼻先に皱を寄せながら息を诘めてしまう程の嫌悪感と不気味さを持ち合わせていて、ディルトは天井から伸びる逞しい锁に日に焼けた両腕を拘束されたまま、低劣なその爱抚のごときテールの挙动から逃れようと、悬命に身をよじっては足掻き続けた。
10
「く……ッ…!おの…れ……ッ!」
强く握り缔めた両の拳に力を込めると、天井から下がる锁がじゃらりと耳障りな音を立てながら白く光った。
「っ……!」
もはや、どうする事もできない事は明白だったが、だからといって、谛めてしまう訳にはいかなかった。
ここで、こんな场所で、こんな无様な姿で。
「く……ッ!」
最期を迎える事など、到底许容できる事ではない。
「こ、の……ッ!」
下の中でゆっくりと这い回るテールの触手を犬歯を剥いて睨み下ろしながら、ディルトは痹れ始めた両腕を振り乱した。
このままでは……このままでは……!
脳里に苏るのは、あの日に见た光景。
荒れ果てた荒野で、红い夕日に照らされながら、闷絶の叫びを张り上げてのたうつ魔狼。
苦闷の声と、远目からでも目视できる程の肉体の痉挛が、まるでつい昨日见た光景のように、ディルトの睑の里に再生される。
「く……!」
自分も、ああなるのか……!
ああして、尻の穴からテールに喰われ、不様に命を吸い取られていくのか……!
思いつつも、その想像を打ち払うかのように头を振って、ディルトが今一度、浑身の力を伤だらけの四肢に込めた时。
ずるうう……ッ!!
「ッ!!!!」
今まで所在なく、何かを探し求めるように下の中を这いまわっていたテールの触手が、突如として命を吹き込まれたように、力强く蠢いた。
直後。
「ッうあ…!!」
冷たく、ぬめつく先端で、隠された秘部を抚で上げられて、ディルトは呻いた。
呻いたと同时に、今度は両目を见开いて、そしてそこから、动けなくなった。
「や、やめ……ッ!!」
锁に繋がれた両腕に血管が浮き立つほどの力を込めて、自身の臀部に目を向ける。
无理矢理にひねった首筋が、ぎしぎしと苦闷を诉えながら痛んだが、そんな事は、もはやどうでもいい事だった。
「や、めろ……!!」
绞り出すように低く叫ぶと、下の中……臀部の中心でテールがうねる。
「ッ……!!」
ぬめぬめとぬめつく触手の先が、ディルトの滑らかな肌を舐めるように这いまわると、それは先端を矢じり状に尖らせて、一瞬の间动きを止めた。
「……!!」
活発だった挙动が、一瞬の静寂に饮み込まれ、牢内には、テールの蠢く音も、ディルトの低い呻きも闻こえない。
全てが、止まってしまったような、そんな一瞬だった。
けれど。
ずるううう……ッ!!
「ひ…ッ…!!う、あああああああッッ!!!!」
冻った河が瓦解するように。
张り诘めた海面が、大きな波によってうねり、割れるように。
一瞬の静寂は、テールの强く、明确な进军によって、文字通り、音を立てて打ち破られたのだ。