…め……ッ」
「ああ?なんだァ?」
「自分たちの手では何もできずに……こんな…こんな生き物を、使って……耻ずかしくは…ないのか……?ふ、ふふ、さすがは……下劣な魔王の……手下だ、な……!敌ながら……情けなくて、涙が出る……ね…!」
「「!!」」
身体の底から绞り出すように、ディルトは低く重く、そして薄い嘲笑をまとった语気を魔族に投げた。
例えこの场で自分の命运がついえようとも、屈する事だけは、膝をつく事だけはしたくない。
最期まで……自分は最期まで、共に戦った仲间や、自分を信じて手を振ってくれた人々に、耻じない己でいなければいけないのだ――!
淫欲に侵されかけていた瞳に最期の闘志を赤く燃やして、ディルトは汗にまみれた震える拳を握り込んだ。
自分の言叶に魔族たちが激昂し、このままこの牢の中でなぶり杀しになるならそれでもいい。
ただ、最期まで……决して足を折らずに、奴らの暴虐に耐え続けてみせる――!
意を决して、ディルトはいまだ酩酊感の残る头を持ち上げ、眼前の暗闇に浮かぶ魔族の瞳を真っ直ぐに射抜いた。
さあ、いつでも来い……!
己の不逊な态度と声に、魔族たちが牢の戸を开け、先刻自分をそうしたようにしこたまに殴りつけ、蹴り上げ、最後にはその手によって感情的に命を剥夺される事を思い描くと、ディルトは决然と前を向いた。
が。
「……はん、なるほどねェ。こりゃあ确かに勇者サマだぜ。伟そうに御托并べて、大上段に演説かァ。くくく!いやァ、见事见事。けどよ、俺たちはそういう下らねえ正义を振りかざす野郎を见ると……」
「……!」
「尚更いじめたくなっちまう性分でねェ……!!」
「ッ…!!」
鉄格子の向こう侧から闻こえた返事は、ディルトの想像とはかけ离れたものだったのだ――。
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「さァて、魔王様の事を下等呼ばわりした勇者サマよォ。俺たちの前でそんな事言って、ただで済むとは思ってねェよなァ?」
「ッ……」
ニヤニヤと嗤う魔族の男たちを前にして、ディルトは背筋を冷たい汗が伝い落ちる感覚に身震いした。
浅虑だった、と思う间もなく、魔族たちは牢に繋がれたディルトの顔を覗き込む。
冷たい岩肌に囲まれた己とは正反対に、愉悦に満ちた笑みを浮かべる魔族たちの视线を感じて、ディルトは今から行われるであろう、苛烈の限りを尽くした暴虐に我知らず身体の芯を热くする。
挑発にも乗らず、感情に激する事もなく、不敌な笑みを浮かべる魔族たち。
一体……何を……。
考えて、ディルトがごくり、と喉を鸣らした、刹那だった。
「さて……それじゃあまずは……どんな『オシオキ』がイイだろうなァ……?」
「……く…ッ」
「そうだなァ、それじゃ……とりあえずはお前の大好きテールちゃんに……そろそろ本性を见せてもらうとするかなァ……!」
「ッ?!」
冷たい嗤いを含んだ声で告げられて、ディルトは弾かれたように顔を上げて魔族を见やる。
なん――だと――。
「くくく……!おやァ?つい今まであんなに强気だったってのに、急に顔色が悪くなったぜェ?どうしたんだよ、勇者サマよ……!」
「……ッ…!」
くつくつと喉で嗤う魔族を前に、ディルトは思考が停止したような错覚に捕らわれて动けなかった。
テールの……ほん…しょう……?!
确かに闻こえたその言叶を、何度も头の奥で缲り返すと、ぬるり、と下半身で蠢く感触がディルトを袭う。
「ッ――!!」
头の中で答えが导き出されるよりも数瞬早く、ゆったりと鎌首をもたげはじめた触手の动きに、ディルトがぎくりと体干を冷たく硬直させると、その姿を见つめながら魔族の男が下品に嗤う。
「さァて、それじゃあそろそろ……本格的に楽しいショータイム、といくとするかァ……!!」