61
「おい、人间。司祭様がお呼びだぜ。さっさとこっちへいて来い!」
この、男――!!
瞬间的な、煌めくようなまたたきの後、ディルトの身体には、言叶にする事さえ
己にかけた言叶使いとは正反対の、殷懃な态度でこうべを下げた魔族を前に、ディルトは再び乾いた口内で热い唾液を咽下した。
「ッ!!」
「ッ――!!」
高らかに嗤う魔族を前に、ディルトは口を噤んだままで自分の足元をねめつけた。
遂に眼前に姿を现した元凶とも言える魔族を前に、ディルトは声を荒げようと息を饮んだが、その挙动よりも寸分早く、司祭と呼ばれた男は椅子の上で微かな音で鼻を鸣らすと、见下げ果てた愚者を见る様な目つきでディルトを见やり、そして言った。
もう、自らの意志の力ではどうする事もできぬ耻ずべき事実と、これから己の身を焼くであろう凄惨な未来とに、板挟みになりながら、ディルトはただ待つことしかできなかった。
「…………」
闻き惯れぬ声に顔を上げると、そこでは近卫兵じみた兵装をまとった魔族の男が、いかめしい表情でディルトを见下ろし、颚をしゃくってコロッセオの内部へと続く通路を指し示していた――。
「ああ、それともナニかァ?『イキかけてた』じゃなくて……実际ドライでイキまくってた、ってかァ!?テールちゃんにケツの穴と金玉袋こね回されて、お前歩きながらイってたのかァ?!クハハハハッ!!どうりで歩きながらあんなにガマン汁ポタポタポタポタ垂らしてたワケだなァ!!そうかそうかァ!!お前ェは素っ裸でケツの穴犯されながら引っ立てられる姿魔族に见られて……その兴奋と刺激で気持ちヨ~~くなっちまってたワケかァ!!ハハハハハハハッ!!!いやァ、七日间もかけて仕込んだ甲斐があったよなァ!!最初は清廉洁白で高洁だった勇者サマが……今じゃ全裸で外を歩いてドライで疑似射精するまでの身体に堕ちちまったワケだァ!!いやいや!!これなら司祭様も観客も……さぞやお喜びになってくれるだろうぜェ!!ハハハハハッ!!」
だが。
「司祭様、连れて参りました――」
「ッ――!!」
「ああん?何今更キレイぶってんだよ!道中ずっとコレをおっ勃てっぱなしだったクセしてよォ!!」
のりがキツかったのかァ?いや、そんなはずはねェよなァ?牢狱からこのコロッセオまでは距离こそあるが、道は起伏もねェし単调だ。それになにより、锻え抜かれた戦の勇者サマの肉体が、ただ歩いてるだけでそんな风にヘタばるなんてありえねェよな?って事は……その荒い息づかいは、やっぱりアレかァ?素っ裸のまま外を歩いて……その上そのみっともねえ格好を俺らの仲间に见られたせいで……とんでもなく兴奋しちまってるせいなのかァ?」
「……ッ…!そ、そん、な……そん、な……事、は……!!」
华美な意匠の施された椅子の上、ゆっくりと腕を组み替えながら视线を细めた男こそ、牢での长い监禁生活の中、魔族たちによって几度もその名を耳にした、司祭――。
「ッ――…!」
そうしてディルトが、细かく震える口唇を噛み缔め数分が过ぎた顷だった――。
投げつけられた冷めた口调に、思わずディルトのまなじりが吊り上がる。
「ッ……!」
「は、司祭様。この生き物が、魔王様に反逆せし忌むべき人间、勇者ディルトでございます」
「んあッ!!」
まるで自身を呑み込むかのごとく大きく口を开いたコロッセオの鉄门扉をり抜け、连行されたのは、细い廊下の先に位置する暗く、しかし绚烂な装饰の施された一室だった。
「ふん、勇者だ、などと所诠は人间风情の戯言よ。下らん妄言を真に受ける必要はない」
ディルトが眼前の司祭からの言叶に満身を怒らせ、喉の奥に怒声をこみ上がらせたその瞬间、彼の首元ではルーンの刻まれた重い首枷が血のように红く光りだす。
「へへへッ!おーおー、なんだよ、もうすっかりサオの根本までカチカチで……クククククッ!!金玉なんか袋の中で上がりっぱなしじゃねェか!!なんだァ?お前、もしかして歩いてる间中ずうっと……こんな风にイキかけてたのかァ……?」
「クククククッ!なんだよ、今更隠さなくったってイイじゃねェかよ!なんたって俺たちは……ケツの穴の中の温度まで知ってる仲だろォ…?だったらそんな风に隠さねェで……正直なトコロを教えてくれよ…!!クククククッ!!」
「……ほう、『それ』が、あの――」