も困难な、ひどく钝重で缓慢な、言い知れぬ脱力感だけが残り香の様に刻まれる――。
「う、く……あ、あ……」
身体中のあらゆる猛気を、一瞬のうちに首元の鉄块に吸い上げられて、ディルトが焦点の定まらぬ视线で眼前を见やると、その様子を身じろぎもせずに眺めていた司祭は、唇の端をほんの仅かに吊り上げた。
「ふん、见ろ。所诠人间……それもこんな小僧などこの程度だ」
「ッ……!な、に……!」
「大した精度を持たぬ低级ルーンを身に受けただけで、立っている事すらもおぼつかぬではないか。これが勇者とは、人间どもも笑わせる。この程度の小僧が、我らが魔王様に牙を向けようなどと――笑止千万、片腹痛いにも程があるわ」
「く……ッ」
「ふん、まぁ良い……。所诠、人间などとはこの程度の生き物だ。我ら魔族の足元にも及ばぬ低劣で、不様な种にすぎん。劣种は劣种らしく、地面を这いずって生きていれば魔王様もお目こぼしになっただろうものの――。身の程を知らぬ劣种は何者よりも质が悪いな。さて、まあこんな话は蛇足だったな。今は人间についての讲釈を延々垂れている时ではない」
「――――ッ」
「今は――。そう、今は――。小僧。お前の――。魔王様の命を狙った首谋者であるお前の……刑罚を処するが何事よりも优される时――」
静かに告げた司祭の瞳は、ぐらつきながらも必死に床を踏みしめるディルトの裸体を舐めまわすように観察すると、やがてその傍らに立つ近卫兵へと移される。
「おい」
「は――」
たった一言――。
言叶、と呼ぶ事すら惮られる程の短い声を発した後、司祭はゆっくりと豪奢な椅子から立ち上がる。
居室中の全员……いや、ディルト以外の魔族たちが低くこうべを垂れるその前を、司祭はゆっくりと歩み去りながら廊下へ続く戸口へ向かう――と、その途中、よろめきつつも己を睨む裸体の前で、ほんの一瞬歩みを止めた。
「…………楽しみにしていろ、小僧。お前には――悔やんでも悔やんでも……悔やみきれぬ程の苦痛と辛苦、そして――死ぬよりも苛烈な真の絶望を味わわせてやる――」
「ッ……!!」
高い天井を吹き抜ける风に、かき消されてしまいそうなささやかな掠れ声でそう告げると、司祭は何事もなかったかのように前を向き、そして恭しく扉を开く近卫兵の前を悠然とした足取りで通り过ぎていった――。
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「オラ!人间!!キリキリ歩け!!」
「く…ッ」
「歩けねえって言うんなら、手足ブッた切って引きずって行ったっていいんだぜ!!」
司祭が部屋を出ていってのち、ディルトは股间から繋がる二本の锁を近卫姿の魔族たちによって握られると、その个所を力任せに引き立てられて、命じられるままに暗い居室を後にした。
「く、う……」
いまだ脱力感と倦怠感の残る身体を引きずるようにして魔族の背中に付き従うと、どこからともなく低い怒声のような复数の声音が闻こえてくる。
「へへ、闻こえるか?人间よォ。この声は……お前の事を待ちかねてる観衆たちの歓声だ……!魔王様に刃を向けた憎き人间の公开処刑だって闻いて、魔界中の魔族たちが朝一からコロッセオに押し寄せて来て大変だったぜ…!ククク…!かくいう俺も……今から楽しみでしょうがねェんだがな……!!テメエのその生意気なツラが、一体どういう风に歪むのかを想像すると…よォ…!!」
「ッ――!」
视线だけで己を见やる近卫兵に、更なる不安感を煽られながら、それでもディルトは足を止める事は许されなかった。
狭い通路を歩き、间の様な场所を抜け、そして先刻とは打って変わったい廊下を通り过ぎ――そうしてディルトは、辿りいた――いや、辿りいて、しまった――のだ。
処刑场であるコロッセオ内の円形闘技场……そこへと繋がる、最後の砦とも言うべき入场门のその前に――。
「よォし、それじゃあ今から……テメエを闘技场の中に连れて行ってやるからなァ……!いいかァ?间违っても変な気は起こすんじゃねェぞ?さっきの司祭様の部屋での事で重々理解したとは思うが……テメエの身体はもう自分の思い通りになんかならねェからな…!分かったら、大人しく俺の後にいて来い。観客席に満员の観衆连中にしっかりお前の姿を见せて……それから『指定席』にご招待してやるから、よォ……!!」
含みのある魔族の言叶に、ディルトの胸中では不吉な予感が