く间に闘技场全体を包み込むほどの大歓声へと姿を変える。
『杀せ!!杀せ!!杀せ!!杀せ!!』
「……ッ!!」
自らの拘束された台座の周囲、あらゆる方向から投げつけられる鋭利で怒気を含んだ唤声に、ディルトがごくりと喉を动かしている间にも、周囲で起こる『杀せ』の声は巨大に、激しくなっていく。
『杀せ!!杀せ!!杀せ!!杀せェ!!』
「く……ッ」
一糸まとわぬ裸体のあらゆる个所に、魔族たちの低く轰くような怒号を受け止めながら、ディルトが『ここまでか……』と覚悟を决めつつ、ほんの仅かに両目を细めた……时だった。
「杀す!结构!私の心も皆様と同じです!この男を杀してやりましょう!!そう、皆さんのおっしゃる通りです。我ら魔王様の命を狙った首谋者であるこの男、命を夺ってやらなくては気が済みません!」
いつの间にか台座の傍らへと歩み寄った司祭が薄い唇を持ち上げると、観衆たちに向け、しわがれた声で话しだす。
「皆さんの提案通り、火にかけ、煮え汤を饮ませ、手足をもぎ、内臓を引きずり出し……そして最後にはこのふてぶてしい头を胴体から切り离す。そうしなくては、我々魔族の怒りは収まらない――!!」
『オオオオオオ!!』
低く轰く喝采を张り上げる観衆たちの唇が、再び歓喜しながら歪められていくのを见つめながらも、ディルトにはもうどうする事もできなかった。
このまま、自分はここで死ぬのだ。
冷酷に响く司祭の声と、涌き上がる歓声を闻きながら、ディルトは睑を下ろすと、谁にも分からぬように密かに一人、引き结んだ口唇を噛み缔めた。
ここで、终わりなのか。
思ったが、恐れはなかった。
ここで死ぬ事にも、今から我が身に降りかかるであろう、悪辣な暴虐にも。
生きたまま身を焼かれ、手足を引きちぎられるのは、想像を絶する苦闷と痛みを伴うであろう。
だが、それでも、怖くはなかった。
覚悟の上だったのだ。
全てを覚悟の上で、自分は、魔王を打倒するべく、剣を取ったのだ。
「…………」
ひとつだけ、後悔があるとすれば、それは无论、诸悪の根源である魔王を讨ちとれなかった事実だけだが、それはもう、仕方のない事だ。
やがて……そう、やがて自分が魔界で死した事が人々の间に伝われば、きっと新たな勇者が名乗りを上げる。
自分や、その先代の意思を継ぐ、新たな谁かが。
そして、その谁かが、今度こそ、必ずや、魔王を……!
「……」
心中で、まだ见ぬ新たな後継者に望みを托して、ディルトが明确な覚悟と共に、己の前に横たわる凄惨な死の予感を、まじろぎもせずに真っ直ぐと见つめた、その直後だった。
「しかし!杀すのはものの一瞬です!首をはねて一瞬!火で焼いて半日!手足を切り落とし、身体中を切り刻んでも、死に至るまでもって一日!たったそれだけの短い…ごく短い苦痛を与えるだけで皆さまは満足できますでしょうか?いいや、満足できるはずがない!!そう、もっと……もっと苦しめて贬めて……!!我らが魔王様の命を夺おうとしたこの男に、地狱を味わわせてやりたいと思いませんか!!」
ディルトの冷え切った鼓膜に、予想もしなかった台词が飞び込んだのだ。
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「皆さん、良くお考えください。杀すなどという事は、いつでも、そして一瞬でできる事ではありませんか!」
「!!」
高々と掲げられた司祭の台词に、ディルトは息を饮み、言叶を失くして硬直した。
杀す、などという事は――、一瞬で――。
「ッ……!!」
脳内で响いた冷酷で、阴惨极まりない掠れた声に、ディルトが固唾を饮んでいる间に、観客席からは热い怒号が沸き起こる。
『オオオオ!だったらどうするってんだ!!』
『そうだそうだ!今杀さねえなら、一体いつ杀すって言うんだ!おい!!』
『そうだ!!杀すよりもヒデェ地狱ってのは、一体どんな事なんだ!!』
军旗を掲げるように告げた司祭の声に、観衆たちからは荒い语気や杀気が飞ぶが、そんな事はディルトの意识には入らなかった。
それよりも。
この、男……!
『杀すのは一瞬、いつでもできる』
そう言った男の横顔は、微笑んでいた。
见间违いなど