さま歓声と共にお迎えください!!」
「く……ッ!!」
愉悦に浸る男の声と、周囲から涌き上がる歓声の狭间、その両者に露わになった裸体を殴打されたディルトが、眉间に深い皱を寄せ、迫りくる残虐な未来に立ち向かおうと背筋を固めた――その瞬间。
「ン……モオオオオオオオオオッッ!!!!」
「な…ッ?!なにッ……!?」
コロッセオの闘技场内にある分厚く武骨な钢鉄门のその向こう侧で、饥えた野獣のごとき低い咆哮が大気を震わせ张り上がった――。
68
一歩、一歩、低い地响きを鸣らしながら近づいてくる分厚い巨体に、ディルトは全身を総毛立たせて身构えた。
そん、な――――!!
こんな、事が――――!!
こんな事が、あるはずが――――!!
いや、あっていいはずが――――ないではないか――――!!!!
けれど、ディルトが愕然としながら言叶を失い、惊愕に目を见张るその前で、现実は无情にも确かな时を刻み続けた。
开かれた钢鉄门。
沸き立つ観衆。
上がる歓声。
そして、コロッセオ中に鸣り渡る、重く巨大な足音と、それに続く荒ぶる咆哮――。
「く……ッ…!!くそ……!!く、そ……ォ……!!!!」
ゆっくりと、しかし确実に近づいてくる悪梦を前に、ディルトは自分の喉が急速に缔まり上がっていく事を感じて声を失くすと、厚い鉄枷に拘束された四肢をよじって、何とか目の前の现実から逃避しようと跃起になった。
开かれた钢鉄门の向こうから、低く轰く咆哮と共に出现したのは――おぞましき姿をした巨体を夸る魔獣だった――。
『オーガ』――。
人间よりも数倍巨大な筋肉に铠われた屈强な体躯に、獣そのものな牛の头を并せ持つ――异形の怪物。
猛々しい牡牛のごときその姿を、ディルトは过去の戦场において几度も目にした事があった。
刚腕から缲り出される一撃は坚牢な城门をも粉砕し、分厚い筋肉に覆われた肉体は刃の切っ先程度では伤一つ付ける事もかなわずに――。
ディルトたち人间军が、何度となく煮え汤を饮まされた、忌むべき魔獣、その生き物が――なぜ、今、目の前に――――!
しかし、ディルトが双眼を割り开き、冲撃に身をすくませながら声を失くした理由は、恐るべき魔獣が眼前に现れたから――ではない――。
彼が、ディルトが缚り付けられた台座の上、声帯を引きつらせながら怒声を张り上げる事すらできない理由は――。
「ン……モオオオオ……!!」
「ッ…!!く、くう、う……ッ!!」
再び上がった野獣のごとき咆哮に、ディルトは腹の奥底を震えさせられると、汗の浮かんだ眉间をしかめて呼吸を饮んだ。
こん、な――事、が――――。
苦しげに细めた视线でまじろぐ事もできずに捉えた现実を前にして、ディルトがごくりと喉を鸣らすと、観客席からは哄笑交じりの大喝采が沸き起こる。
「く……ッ!!」
ズシリ――筋肉の块のような巨躯が大股な一歩を踏み出すと、闘技场の乾いた大地が揺れ动く。
ズシ、ン――!
「ッ――!!」
开かれていた钢鉄门が、钝い音を立ててゆっくりと闭じられていくその前で、牛头の魔獣はゆっくりとディルトに向かい歩き出す。
「く、そ……!!く、来る……な……ッ!!」
重い首枷を咬まされた头部をよじって身じろぎしても、ディルトの视线は先刻捉えたただ一个所から动かない。
ズシン――!
「く……ッ!!」
巨大な牛蹄がまた一歩、闘技场の中央に设置された祭坛に向かって近づくと、ディルトの视线の先では捉えた『物』が大きく上下に揺れ动いた。
「や、やめ……ろ……!!来る……な……ッ!!」
あまりに丑悪でおぞましい现実を前にしながら首を振っても、もはやこのコロッセオ内には、ディルトを助けようとする者などただの一人も存在しない。
闻こえてくるのは、観衆席からの低く荒ぶる怒号や嗤い、そして徐々に祭坛へと近づいてくる、忌むべき魔獣の足音だけだ――。
「く、くそ……!!くそォお……!!」
手足に繋がった太い钢鉄をかき鸣らしながら、ディルトはゆっくりと接近する悪梦の元凶をねめつける。
だが、そうして絶望に饮み込まれ